2007.11.13 Tuesday
第38回明治神宮野球大会・3日日 2007.11.13.
明治神宮野球:横浜、常葉菊川が決勝進出 高校の部
第38回明治神宮野球大会は第3日の13日、神宮球場で高校と大学の準決勝各2試合を行った。 高校の部は横浜(関東・神奈川)が九回に4点を挙げて東北(東北・宮城)に逆転勝ちし、10年ぶり2回目の決勝進出。常葉菊川(東海・静岡)は長打攻勢で主導権を握り、明徳義塾(四国・高知)の追い上げを振り切って初めて決勝に進んだ。横浜と常葉菊川が所属する関東、東海両地区には来春の第80回記念選抜大会の「神宮大会枠」が1つずつ与えられる。 大学の部は早大(東京六)が斎藤−大石の1年生右腕のリレーで八戸大(北海道・東北)を退け、2年連続4回目の決勝。東洋大(東都)は連投の大場が上武大(関東第1)から14三振を奪って2安打完封し、29年ぶり2回目の決勝進出を果たした。 ◇土壇場で逆転…横浜・渡辺監督のさい配ピタリ これが横浜の強さなのだろう。柔軟なさい配と、それを裏打ちする鍛え上げられた選手の能力。土壇場で試合をひっくり返した。 1点を追う九回。渡辺監督が動いた。代打・藤原にセーフティバント。これが内野安打となり、扉が開く。すると代打・有泉が初球バント、中原も初球を中前打で1死一、三塁。すかさず好機を広げた。 ここからが真骨頂だ。打席は1番・松本。初球は「打て」のサイン。しかし打ち損じのファウル。そのスイングに渡辺監督は直感した。「そろそろ下降線かな」。昨夏の甲子園も経験した巧打者でも、もし内野ゴロ併殺なら試合は終わる。方針を変えた。3球目。一転命じたのはスクイズだった。 東北・萩野はとっさに高めに外したが、松本は「いつも高めは練習している。体が勝手に反応した」。バットを立て、難しい球を投前へ転がした。同点。さらに筒香の2点右前打などでたたみかけ、試合は決まった。 この日、横浜はピリッとしなかった。エース土屋は制球が粗く、野手も犠打を再三失敗。ただ、正念場の集中力はやはり非凡だった。「ふだんやっていることを、いかに冷静にやれるか。それを乗り切らないと、本当に強くはなれない」と渡辺監督。一回り強さを増した横浜。10年ぶりの神宮の頂点を目指す。【野上哲】 ○…常葉菊川は、思い切り良いスイングで序盤に試合の流れを呼び込んだ。口火を切ったのが、先頭打者の中川。1点を追う一回、直球をたたいて右中間スタンドに運び、2死から酒井のソロ本塁打で勝ち越し。四回には3本の長打を含む4安打で一挙に4点を挙げ、突き放した。佐野部長からは「フルスイングして相手を怖がらせることが1番打者の役割」とアドバイスされたと言い、「思い切り振って塁に出ることだけを考えていた」と笑顔を見せた。 ○…昨年のセンバツ王者・常葉菊川に惜敗した明徳義塾は、背番号9の常原が好投した。県大会、四国大会を一人で投げ抜いたエース南野が肩の痛みを訴え、登板を回避。急きょ1年の栗野が先発し、常原が四回無死から登板。変化球主体の投球で5回を5安打無失点に抑えた常原は「南野がいない分、総力戦だと思っていた。もっとコントロールを磨き、外野手と投手の両方で活躍したい」。馬淵監督も「2番手(投手)のめどが付いたことが収穫」と話した。 ○…早大の2番手・大石が存在感を見せつけた。六回から斎藤をロングリリーフして1安打無失点、7奪三振の力投。七回、八戸大・道広に対しては、カウント2−2から、自己最速を2キロ更新する球速151キロで見逃し三振を奪うなど見せ場を作った。今春、福岡大大濠高から野手で入部したが、高校時代は投手も経験。応武監督に直訴して投手に復帰した。春先はケガに悩んだが、今秋リーグ戦は9試合に登板、2勝を挙げた。今でも時折、応武監督から野手への転向を打診されると明かした大石は、「ピッチャーでやりたい」と笑顔で強調していた。 ○…準決勝第2試合は息詰まる投手戦。東洋大・大場が14個、上武大・石川俊が12個の三振を奪った。大場は球速140キロ台後半の直球に変化球をうまく組み合わせて2安打完封。「先制点が勝敗を左右するので粘ろうと思った」と話して笑顔。決勝の早大戦は、斎藤との投げ合いに周囲の期待が高まるが、「最後の最後なので、思い切ってやるだけ」と3連投に意欲をみせた。高橋監督は「今日は大場に尽きる。やっと黄金軍団と戦える。こっちはダイヤモンドが1人いるからね」と終始ご機嫌だった。 ○…大学の部…○ ▽準決勝 早大(東京六) 000210000◆3 002000000◆2 八戸大(北海道・東北) (早)斎藤、大石−細山田(八)桜田、前橋、村上−片葺、伊藤 東洋大(東都) 000000002◆2 000000000◆0 上武大(関東第1) (東)大場−大野(上)石川俊−松井 ★常葉菊川の捕手が意識失う 常葉菊川の栩木(とちぎ)雅暢捕手(1年)が明徳義塾戦の六回の攻撃中に次打者サークルで、全身にけいれんを起こして意識を失った。すぐに意識は回復し、搬送された東京都内の病院でCT検査(コンピューター断層撮影)などを行った結果、頭部や血液に異常は見つからなかった。てんかんなどの既往症もないという。14日の決勝は欠場し、帰郷して精密検査を受ける。 【ことば】神宮大会枠 第75回記念選抜高校野球大会から創設された特別枠で、明治神宮大会の優勝校が所属する地区に1枠が与えられていた。来春は第80回記念大会で出場校が4校増の36校。神宮大会枠も2枠となり、今回、決勝に進出した横浜と常葉菊川が所属する関東と東海両地区に各1枠が与えられる。 すでに一般選考枠は関東・東京が合計6枠で、内訳は関東4、東京1を基本数とし、両地区の比較で1校を選ぶことに決まっていた。しかし、この日の結果で関東の基本数が5となり、関東・東京で7枠に。東海・北信越は合計5枠(東海2、北信越2、両地区比較で1)だったが、東海の基本数が3に増え、東海・北信越で6枠となる。 毎日新聞 2007年11月13日 11時34分 (最終更新時間 11月13日 21時46分) |